東京オリンピックが開幕し、連日にわたり歴史的快挙を続ける日本。
大会4日目も、オリンピック史に残る偉業が達成される。
今大会からオリンピック種目として採用された卓球混合ダブルスで、水谷隼・伊藤美誠ペアが中国ペアを破り、金メダルを手にしたのだ。
オリンピックにおいて、日本が卓球種目で金メダルを獲得したのは史上初である。
優勝への道程
日本にとって最大のピンチは、準々決勝ドイツ戦に訪れた。
互いに3セットずつ取り合った最終第7セット。
ドイツペアの猛攻に、いきなり1-7と劣勢に立たされる。
日本も必死に追い上げるが、とうとう6-10とマッチポイントを握られた。
その絶体絶命の状況から追いつき、実に7度のマッチポイントをことごとく凌ぐ。
強靭な粘り腰の末、ついに16-14で奇跡の大逆転勝利を収めたのだ。
試合後、激闘を物語るように伊藤美誠の目には光るものがあった。
そして、最大の強敵・中国との決勝戦。
もちろん、キョキンとリュウシブンの中国ペアには、金メダルしか許されない。
ある意味、卓球王国の威信にかけて、日本以上に負けられないのだ。
試合が始まると、最強中国は1・2セットを簡単に連取する。
第3セットも、0-2と日本は先行される苦しい展開だ。
しかし、そこから挽回し、このセットを奪う。
すると、勢いに乗った日本は第4・5セットを接戦の末に制し、王手をかけた。
だが、このまま中国が簡単に土俵を割るはずもなく、第6セットを奪い返す。
これでセットカウント3-3になり、フィナルセットに突入した。
泣いても笑っても、このセットで決着する。
第7セット、日本ペアがロケットスタートを決める。
特に、水谷の強打が冴えわたり、次々とポイントを奪っていく。
すると、伊藤も負けじと会心のショットで中国ペアを圧倒する。
この大一番にもかかわらず、時折り笑顔を見せる伊藤美誠が頼もしい。
気が付けば、8ー0と大きくリードを奪っているではないか。
中国も最後の意地を見せ、徐々に点差を詰めていく。
だが、金メダルの重圧もなんのその、勇気を出して攻めの姿勢を貫く水谷・伊藤の日本ペア。
そして、ついに日本が10ー6とマッチポイントを迎えた。
伊藤美誠が放ったサーブを中国がネットにかけた瞬間、日本チームの金メダルが決まった。
歴史的勝利の瞬間にもかかわらず、日本ペアに涙はなく、そこにはあまりにも爽やかな笑顔があった。
これまで4度戦って1度も勝ったことのない相手に、オリンピックの晴れ舞台で金星をあげる勝負強さ。
東京の地で勝てたのも、何かの縁を感じさせる。
まとめ
日本ペアが成し遂げた金メダルの偉業。
だが、その道のりは決して平坦なものではなく、一つひとつ階段を登って栄冠にたどり着いたのである。
2012年ロンドン五輪、女子団体で日本はオリンピック史上初のメダルを獲得する。
続く2016年リオ五輪では前回に引き続き女子団体で銅メダル、男子個人でも銅メダル、男子団体にいたっては銀メダルを勝ち取った。
男子種目の表彰台の原動力となったのは、いずれも水谷隼であった。
日本の卓球界をここまで引き上げたのは、水谷隼の存在があってこそだろう。
その水谷隼が金メダルを獲ったのだ。
表彰台の1番高い場所で、金メダルを胸に提げ日の丸を聞く姿に、私は感無量の思いがこみ上げる。
明るくインタビューに答える、若い伊藤美誠の屈託のない笑顔もまた素晴らしい。
同郷のふたりが達成した歴史的快挙は、日本列島に歓喜をもたらした。