50歳の新人、先生になる 第2回「受験のプレッシャー」





これは50歳にして、これまで未経験の塾講師を志したアラフィフ男の体験談です。

講師として子ども達と関わる中で、気付いたことや所感を述べていこうと思います。

当ブログが塾講師を始めて間もない方や指導方法に悩んでいる方、あるいは子を持つ親御さんの一助になれば幸いです。

~本編スタート~

受験のプレッシャー

中間や期末テスト、学力試験など、中高生は様々な試験を受けることになります。
中でも、最もプレッシャーがかかるのは、言うまでもなく受験です。
生徒によって多少の差はあれど、例外なく双肩に重圧がのしかかります。

受験シーズンを迎えた今、もし、あなたが受験間際の生徒から切羽詰まった表情で「入試が怖い。逃げ出したい」と言われたら、何と言葉をかけるでしょう。
多くの人は、やれ「大丈夫!」とか「自分を信じろ!」などと言うのではないでしょうか。
合格確率80%ぐらいならばまだしも、当落スレスレの生徒にはいささか説得力がないようにも感じます。
そもそも生徒が訴えているのは、不安から来る恐怖心なのです。

では、どうすれば生徒の不安や怖れを解消できるのでしょうか。
私が思うに、そんなことは出来ません。
つまり、どんな言葉にも恐怖心を払拭できる力は無いのです。
では、どうするか。
私ならマイク・タイソンをヘビー級チャンに育てた“伝説のトレーナー”カス・ダマトの言葉を参考にします。

ボクサー、それもヘビー級のボクサーは2m近い上背に100kgを超える屈強な肉体を誇っています。
そのほとんどがスラム街や貧しい環境で育ち、暴力の支配する世界を拳一つでのし上がってきた強者達です。
そんな数々の修羅場を掻い潜ったタフガイも試合が近づくと、恐怖に駆られ怯え出すといいます。
リングに上がるということは、それほどまでに恐ろしいものなのです。

トレーナーのほとんどは「相手を怖がるな!」「お前ならやれる!」と檄を飛ばします。
しかし、どんな言葉もボクサーの恐怖心を取り払うことはできません。
観客の前でリングに立つ恐怖、パンチを打たれる恐怖、そして何よりも敗北の恐怖がつきまとうのです。
ところが、ボクサー心理を知り尽くすダマトは、愛弟子にこう語りかけていました。

「リングは死ぬほど怖い。ただし、どのボクサーも同じである」

人は不安や恐怖に襲われるとき、それが自分だけに起こっていると思い込む生き物です。
ですが一方で、皆が同じことを感じていることを知った途端、不思議と気が楽になります。
この「自分だけでない」「みんなそうなのだ」という呪文の効果の程は、みなさんにも覚えがあるでしょう。

人は思い込みの生き物

ドイツの偉大なる哲学者ショーペンハウアーはかく語ります。

「誰もが自分の視野の限界を 世界の限界だと思い込んでいる」

真理だと思います。
人は誰しも、自分で見たものや心で感じたものを世界の全てだと思い込んでしまう生き物です。
自分の五感で認知したもの以外、感じようが無いので、ある意味当然でしょう。
とりわけ、まだ精神的に未成熟な中高生はこの錯覚に陥りがちだと思います。

重圧や恐怖を完全に取り除くことなど不可能です。
せいぜい出来るのは、心の負担を軽くすることだけなのです。
ですが、そのことは子ども達にとって、幾ばくかの救いになるでしょう。

最後に蛇足ですが、私ならこう言葉をかけるでしょう。

「受験は逃げ出したくなるほどプレッシャーがかかる。だが、受験生はみな例外なく…同じことを感じている」

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