パリ五輪「柔道女子48㎏級 角田夏実の栄冠」〜日本チームメダル第1号〜





日本時間の7月27日から深夜未明にかけて行われた柔道女子48㎏級で、角田夏実が日本チーム大会第1号となる金メダルに輝いた。
同階級としては谷亮子以来20年ぶりとなる快挙であり、31歳の角田にとって初のオリンピック出場での戴冠となる。

一方、男子60㎏級では永山竜樹が不可解な判定に見舞われ、金メダルを逃してしまう。
しかし、不運にもめげず気持ちを立て直し、銅メダルを獲得した。

審判の質

予選から試合を観ていたが、相変わらず審判員の質には問題があると感じた。
2000年シドニー五輪・男子100㎏超級決勝における篠原信一の世紀の誤審を受け、ビデオ判定まで導入したというのに…。

今大会も、男子60㎏級準々決勝でそれは起きてしまった。
永山竜樹がスペインの選手と対戦したとき、相手選手の締め技を永山が何とかこらえ、審判から「待て」の声がかかる。
その声に永山が反応し力を緩めるが、相手は力を抜くことなく約5秒にもわたり締め続けたのだ。

この予想外の暴挙に、たまらず失神する永山。
そして、反則行為の被害者にもかかわらず、永山はそのまま敗退を余儀なくされたのである。
何とも後味の悪い結末に、私は先で述べた篠原の誤審が甦る。

だが、そんな私の気持ちをよそに永山は敗者復活戦から勝ち上がり、見事銅メダルを勝ち獲った。
正直、準々決勝までの永山の戦いぶりは本調子とはいえない気がした。
ところが、落胆もあっただろうに、それ以降の柔道は素晴らしかった。

同階級に髙藤直寿という強力なライバルがおり、これまでオリンピックとは縁が無かった永山竜樹。
28歳にして初めて掴んだ夢舞台の結果は、必ずしも納得がいくものではなかったかもしれない。
それでも、決して折れることなき精神力には敬意を表したい。

そして、そんな永山の悔しさを晴らしてくれたのが、48㎏級の角田夏実だった。

女子48㎏級

元々、角田夏実は52㎏級の選手であった。
だが、阿部詩ら若手の台頭もあり、東京五輪後に48㎏級に転身する。
20代後半の決断は、さぞや覚悟が必要だったことだろう。

その大いなる決断が功を奏し、世界選手権3連覇の偉業を達成する。
そして今大会、努力と英断が実を結び大輪の花を咲かせた。

角田を見ていて印象的だったのは、試合直前でも笑顔がこぼれていたことである。
前回大会の同階級代表・渡名喜風南が裂帛の気合を滾らせ、厳しい表情を全く崩さなかったのとは対照的だった。
そんな渡名喜風南の姿に感銘を受けた私だが、角田の明るい表情も好感を持てた。

角田夏実の優勝の原動力となったのは、巴投げからの関節技という必勝パターンである。
特に巴投げに至っては分かっていても防げない、一撃必殺という言葉がピッタリな戦慄の技だった。
私はこれまで、前回大会男子81㎏級の“国を追われた柔道家”サリード・モラエイの肩車にも似た思いを抱いたが、角田の巴投げはそれ以上かもしれない。
なにしろ一度完全に受け止められ動きが止まっても、両袖を掴み相手の腕の自由を奪いながら両足でコントロールし体を浮かし投げ切ってしまうのだから…。
しかも、世界の強豪に研究しつくされる中、それを頂上決戦の舞台で決めてしまうのだから驚愕を禁じ得ない。

また、表彰式を見て改めて思ったことがある。
それは銀メダルのバブドルジ、銅のブクリとバブルファスの全員が角田に敗れたのだ。
つまり、角田はまごうことなき完全優勝を果たしたのである。
ドローの関係もあり、メダリスト全てを倒すことは有りそうでほとんどない。

この3名は誰もが表彰台のてっぺんに立ってもおかしくない実力者だった。
惜しくも銀メダルに終わったモンゴルのバブドルジは現世界選手権王者だけあって、死角の無い柔道を展開した。
フランスのブクリは厳しい組手に加え、前に出る圧力とパワーは階級屈指ではないか。
そして、スウェーデンの18歳の新星バブルファスは最も角田を苦しめた。
あの角田の巴投げが全くかからずゴールデンスコアにまで突入するが、最後はまたもや不可解な判定に泣き反則負けとなる。

角田を含むメダリスト4名全員が、五輪でのメダル獲得が初めてというのも新鮮に映った。

まとめ

4年に1度の「スポーツの祭典」オリンピック。
私は東京五輪終了後、次のパリ大会も是が非でも観戦したいと胸に秘めていた。

最も高いレートの檜舞台オリンピック。
その熱戦を観れるだけで幸せだというのに、柔道初日から日の丸を聴けるとは…何と幸運なのだろう。

2週間の熱戦はまだ始まったばかりである。
次はどんな戦いを観れるのか…胸の高鳴りが止まらない。

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