50歳の新人、先生になる 第11回「観測」傾向を知り知見として活用する





これは50歳にして、これまで未経験の塾講師を志したアラフィフ中年の体験談です。

講師として子ども達と関わる中で、気付いたことや所感を述べていこうと思います。

当記事が塾講師として奮闘している方や、子を持つ親御さん等の一助になれば幸いです。

算数が苦手な子ども

その子は頭が悪いわけではないのですが、とにかく頑なで一度分からなくなると何をどう説明しても理解できない生徒でした。

たとえば、8を分数で表すと8/1となりますが、これはほとんどの子どもは理解できるでしょう。
ですが、その子はなぜか理解できず、8÷1と同義で分数にすると8/1になると言っても頭に入りません。
それではと、暗記して覚えるよう伝えても、頭で理解できないことは頑として受け付けないのです。
ちなみに、私だけでなく全ての講師が説明しましたが、お手上げ状態でした。

今は退塾してしまい、この子を説得するための方策を実証することはできませんが、今でもどうすれば良かったのか考えることがあります。
おそらく、現時点ではこの子に8=8/1を理論的に理解させることは不可能だと思います。

では、どうするか。
暗記するための納得できる理屈を用意するしかありません。

1つ目とし考えられるのは、信号機の話です。
赤青黃の3色を使うのは、実は意味があります。
赤は波長が長く視覚的に確認しやすいので最も事故防止に必要な「止まる」に用い、青は赤の反対色なので真逆の意味となる「進め」、黄色は赤と青の中間色で区別しやすいからといった感じです。
ですが、ほとんどの小学生は意味など知らないでしょう。
でも、みんな信号機の色を見てどうすれば良いかは知っていますよね。

このように、意味や理屈が分からなくとも、人は何気無く覚えることができるのです。
なので、今ならこう言うでしょう。

「君は信号機の色の意味を知ってるかい?知らなくても、ちゃんとルールは覚えているよね。世の中には意味が分からないものが沢山ある。それをイチイチ理屈が分からないという理由で覚えなければ、無知なまま一生を過ごさなければならなくなる。僕も最初は意味が分からなくて暗記した算数の問題が、いつの間にか意味が分かるようになっていた。答えが分かることにより、そのうち過程まで理解できるようになることは珍しくない」

果たして、納得してくれるでしょうか…。

観測

二番目の候補は観測です。
辞書で調べると、「観測とは自然現象を観察・測定し、変化や推移を調べること」とあります。
私の好きな漫画「葬送のフリーレン」の一説に興味深い記述がありました。
それは人間についての考察で、要約すると下記のようになります。

“現代では科学的に証明されたものでも、以前は未知なるものが山程あった。だが、人間はそれを長い年月をかけて観測することにより、理屈が分からなくても対処する方法を作り出していった。つまり、人間には原理が分からないものを「未知なるもの」として扱い、対策を練ることができる能力がある”

よく「習うよりも慣れろ」という言い回しがあります。
最初は難しく感じても、繰り返し練習し慣れ親しむことにより、いつの間にか皮膚感覚で掴んでいくやつです。
楽器の演奏や縄跳びなどが、これに該当すると思います。
これを算数の問題に当て嵌めると、こうなるでしょうか。

“意味が理解できず理屈が分からない問題でも、公式や解き方という対処法を覚え、慣れることにより攻略できるのが算数だ”

「葬送のフリーレン」好きには響くかもしれませんが、ちょっと無理矢理感は否めませんかね…。
ですが、少しでもモチベーション向上に役立てば良いのではないか…そんなことを思います。

ここで重要なのは、あくまでも暗記するのは次善策だということです。
基本は理解することが前提なのは言うまでもありません。
とはいえ、頑迷になるあまり対処法を切り捨てるのではなく、ときには柔軟に次善策で対応する術を覚えるのも、人生という大海を泳ぐ一助になるのではないでしょうか。

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