羽生善治永世七冠 祝!王将戦挑戦者決定





羽生善治永世七冠(本稿では永世七冠を使用)が豊島九段を117手で破り、王将戦の挑戦者に決定した。
羽生善治永世七冠はタイトル通算100期をかけて、藤井聡太五冠王との七番勝負を年明け1月8日から行う。

驚きの速報の連続

11月22日の夜、私はサッカーW杯・アルゼンチン対サウジアラビア戦を固唾を呑んで観戦していた。
なぜならば、優勝候補のリオネル・メッシ率いるアルゼンチンが、ワールドカップ史上初となるアジア代表に敗れるという大波乱が起きたからだ。
しかも、大会前まで36戦無敗という盤石の強さを誇っていただけに、なおさら驚きを隠せない。

すでにお腹いっぱいの私に間髪入れず飛び込んで来たのが、羽生さんの王将戦挑戦者決定の吉報だった。
個人的な感想なのは承知だが、これほどまでのビッグニュースが立て続けに舞い込むのは珍しい。

藤井聡太五冠王との初タイトル戦

タイトル獲得100期を目前にして、足踏み状態が続く羽生永世七冠。
ここ最近は厳しい戦いが続き、昨年度はついに勝率5割を切り、A級からも陥落してしまう。
タイトル100期どころか、藤井五冠とのタイトル戦も正直諦めかけていた。

ところが、強者揃いの王将リーグで全勝し挑戦者に名乗りを挙げたのである。
しかも、渡辺名人、豊島九段、永瀬王座という、藤井五冠と棋界の頂点を争う強豪をなぎ倒しての快挙なのだ。
全盛時代を彷彿とさせる、終盤力を見せつけた勝ち方がまた圧巻だった。
将棋ファンならば誰もが夢見たカードの実現に、喜びを禁じ得ない。

改めて、羽生・藤井戦が実現して気付いたのが年の差である。
羽生善治52歳、藤井聡太20歳と、実に32歳も年の差があるのだ。
大山康晴と中原誠が名人を争った当時、49歳と24歳という年の差も親子ほどに感じた。
だが、それよりも7歳も年の差があることに、今更ながら驚愕する。

タイトル戦の最長年齢差は棋王戦の大山康晴66歳、南芳一26歳の40歳である。
大山十五世名人は、やはり化け物だ(汗)。
きちんと調べていないのだが、おそらく今回の羽生・藤井戦はそれに続く年齢差ではないか。
羽生さんの偉大さを改めて痛感する。
中原対羽生のタイトル戦が実現しなかっただけに、前時代の覇者としての役割を果たした羽生永世七冠には感謝の気持ちが込み上げた。


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50歳からの挑戦

私も羽生さんとほぼ同世代なのだが、年を追うごとに新しいことを始めるのが億劫になってくる。
年を取れば取るほど新しいことにチャレンジしていかないと、どんどん衰えていくことは分かっているのだが…。

順位戦こそ今一つの成績だが、今期は7割近い勝率を残す羽生善治。
年齢を考えれば、驚異的である。

そんな羽生さんは、今年の4月からTwitterを開設した。
50を越えて、あの羽生さんがSNSを始めたことに驚いたのは、私だけではないはずだ。
老け込むことなく、新しいことに挑戦する羽生さんの姿勢は、とても素晴らしいと感じた。

また、開始した日時がとても洒落ていた。
4月2日8時23分。
4月1日だとエイプリルフールと重なり、8時23分は“はぶさん”と読み替えられる。
こんなところにも、ユーモアを散りばめているのである。

50の手習い的なことといえば、大山十五世名人を思い出す。
50歳を目前に無冠となった大山康晴は、“50歳の新人”として心機一転出直しを図る。
過去の栄光を捨て去り、多忙の合間を縫って新しい経験に身を投じていった。
そうして新たな刺激をもらい、見事復活を遂げていく。

羽生善治永世七冠と大山康晴十五世名人に共通するもの。
それは変化を恐れず、年齢に関係なく新しいことに挑戦していく姿勢ではないだろうか。

藤井五冠との王将戦。
結果もだが、何よりも羽生さんらしい将棋を指してほしい。

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