カタールW杯「ベルギー代表の主役」 デ・ブライネとクルトワ





前回のワールドカップロシア大会で3位となった“赤い悪魔”ベルギー代表。
タレント揃いのチームにあって、当時はエデン・ミハエル・アザールとロメル・ルカクが注目選手に挙げられた。

だが、今大会は代表にこそ招集されたもののルカクは怪我のため、予選1回戦のカナダ戦を観客席から見守った。
また、アザールもここ数年は毎シーズンのようにコンディション不良により、以前のような活躍ができずにいる。
このように、2018年の主力ふたりが苦しい状況に置かれている。

そんな中、前回大会に引き続き、主軸としてチームを牽引するのが攻撃の主役ケヴィン・デ・ブライネとGKティボ・クルトワである。



ケヴィン・デ・ブライネ

カナダ戦の前半こそ“らしさ”が影を潜めていたが、後半になると本来の実力の片鱗を見せたデ・ブライネ。
名将ジョゼップ・グアルディオラをして、世界最高のMFと言わしめるのが彼なのだ。

前回は今ほどの評価には至っていなかったが、デ・ブライネのプレーは間違いなく世界最高峰の輝きを放っていた。
ブラジル戦で決めた目の覚めるようなミドルシュート。
そして、日本を奈良の底に落とした電光石火のカウンター「ロストフの14秒」を演出したのも、ケヴィン・デ・ブライネであった。

プレミアリーグで数々のアシストを決めるデ・ブライネは、あらゆる種類の決定的なパスを操る歴史的パサーである。
さらに、ドリブルを仕掛け敵陣を切り裂き、チャンスと見ればミドルシュートでゴールネットを揺らすなど、およそオフェンスに関する全てのことを高次元でこなす。
究極のMFと呼ばれるのも、むべなるかなである。

そんなデ・ブライネのコメントで私が特に印象深いのが、日本戦の直後のインタビューだった。
後半開始からわずか5分あまりで、あっという間に2点を失ったベルギー代表。
負ければ後がないノックアウト方式の戦いで立て続けに失点すれば、ショックを受け動揺するのが普通だろう。

ところが、デ・ブライネはかく語る。

「まだ40分も残っていたんですよ。必ずチャンスは来ると信じていました」

並の選手なら、あの状況に追い込まれた途端「もう40分しか時間がない」と悲観的になるだろう。
ところが、デ・ブライネは「まだ40分ある」とポジティブに考え、味方を鼓舞したのである。
こうした心の強さがあればこそ、絶体絶命のピンチから日本をうっちゃることができたのだ。

心技体の全てが備わったケヴィン・デ・ブライネ。
今や、ベルギー代表の押しも押されぬ大エースである。


ティボ・クルトワ

手足の長さからタランチュラの異名を取り、身長2mを誇るティボ・クルトワ。
そんな彼は、ベルギー代表の絶対的守護神として君臨する。
2018年のワールドカップで驚異のファインセーブを連発し、世界的クラブのレアル・マドリードに移籍した。

クルトワは高身長を活かし、空中戦では無類の強さを発揮する。
また、背が高いだけでなく、キャッチング技術がハイレベルなのも特徴だ。
そして、これほどの大型選手にもかかわらず反射神経にも優れ、シュートやセンターリングに対し抜群の反応を見せるのだから、死角が見当たらない。

“世界最高のGK”と謳われるのも、当然と言えるだろう。

予選1回戦 対カナダ

試合開始直後から、カナダ代表は激しいプレッシングでプレッシャーをかけていく。
そして、攻撃面でもデイヴィスのスピードに乗った緩急自在のドリブルで、ベルギー守備陣を脅かす。

内容的にはカナダが優勢に試合を進め、特に前半はそれが顕著であった。
それでも終わってみれば、バチュアイが決めた得点を守り切ったベルギーが1-0で勝利する。

“シティの人格者”にしてディフェンスラインを統率した、チームの精神的支柱ヴァンサン・コンパニが去った今大会。
ロシア大会よりも、ベルギー代表は苦しい戦いになるかもしれない。
随所に高い技術を見せていたアザールも全盛期に比べ、スピードとキレがないように感じた。
クラブではあまり出場機会がないこともあり、試合勘が戻れば徐々に本領を発揮するのでは?という希望的観測を胸に抱きながら、ルカクの復帰共々期待したい。

前述したように、36年ぶりの出場となるカナダはとても素晴らしいサッカーを展開した。
しかし、前半早々に訪れたPKのチャンスを活かせなかったことが痛かった。
リズムに乗っていただけに、あそこで決めていたら試合展開はガラリと変わっていたかもしれない。

だが、ベルギー代表の危機を救ったのがクルトワだ。
多少コースが甘かったとはいえ、誰もが緊張する大舞台初戦の立ち上がりで、完璧に読み切ったセーブは流石としか言いようがない。
さらに、ベルギーの3倍ものシュートを浴びせるカナダの猛攻を凌いだ立役者も、この偉大なるGKである。

前回大会の準々決勝。
思えば、必死に追いすがるブラジルのシュートの嵐を神懸かり的セーブで、チームを勝利に導いたのもまたクルトワだった。
正直、クルトワでなければ逆転されていただろう。

ベルギー代表の躍進は“世界No.1ゴールキーパー”ティボ・クルトワの双肩にかかっている。

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