2月15日に開催された北京オリンピック大会12日目、2大会連続の金メダルを目指す女子団体パシュートは高木菜那の転倒もあり、惜しくも銀メダルとなった。
スノーボード女子ビッグエアでは、村瀬心椛が17歳3ヵ月で銅メダルを手にした。
これは、日本女子としては冬季五輪史上最年少メダルとなる。
右膝粉砕骨折を乗り越えた末の快挙を成し遂げた。
そして、ノルディック複合個人ラージヒルで渡部暁斗が、3大会連続のメダルとなる銅メダルを獲得する。
33歳で演じた優勝争いは、多くの人々に感動をもたらした。
ノルディック複合個人ラージヒル
レース結果
前半のジャンプは、山本涼太が140mを飛び2位につける。
悲願の金メダルを狙う渡部暁斗は、135mで5位とまずまずの位置でジャンプを終えた。
ジャンプの調子が上がらなかった渡部は、大舞台での会心の一撃にガッツポーズが飛び出した。
後半の距離は、トップのリーベルから山本が44秒差、渡部暁斗は54秒差でスタートする。
渡部は気迫みなぎる滑りで2位集団に追いつくと、そのまま首位を行くリーベルを捉えた。
グイグイと先頭集団を引っ張る渡部暁斗。
そのまま最終周まで先頭集団でレースの主導権を握り、わずかにリードを広げながらスタジアム前の最後の上りにやって来た。
どうやら先頭集団の二人は、振り切れそうだ。
しかし、後ろの集団にいたノルウェーのグローバクが、もの凄い勢いで坂を駆け上がって来る。
ゴールまであと少しの所で、渡部は捉えられてしまう。
さらに、同じノルウェーのオフテブロにも逆転され、3位でフィニッシュと相成った。
あと数百メートルで金メダルだっただけに、渡部の無念はいかばかりであっただろう。
それにしても、トップから2分7秒差、渡部からも1分13秒差でスタートし、驚異の追い上げで差し切ったグローバクの底力には脱帽である。
渡部暁斗の偉大さ
渾身の滑りにもかかわらず、最後にかわされる惜しいレースを展開した渡部暁斗。
ソチ・平昌で銀、今回の銅メダルで3大会連続のメダルとなった。
“キング・オブ・スキー”ともいわれるノルディック複合で、3大会連続で表彰台に上がった偉業はもっと讃えられて欲しい。
33歳とベテランの域に入った渡部は「平昌オリンピック以降の、この4年間が今迄で一番厳しかった」と述懐する。
年齢もあり、思うようなパフォーマンスが発揮できない日々を送った。
そんな中で手にした、今回の銅メダルは立派としか言いようがない。
4年前、平昌オリンピックが終了して間もなく、私はとある記事を目にした。
それは、銀メダルを獲得した渡部暁斗が、実は肋骨を骨折しながら競技に挑んでいたというものだった。
オリンピック直前のワールドカップで痛めたという。
オリンピック本番には「骨の1本ぐらいくれてやる」という意気込みで臨む。
結果は、10㎞にも及ぶレース最後の上り坂でライバルとの一騎打ちに敗れ、僅差で涙を呑んだ。
もし、怪我がなければ…と愚痴の一つも言いたくなるのが人情だろう。
だが、渡部はそのことには触れず、一言「地力の差」というコメントを残すにとどまった。
本人は最後まで黙っているつもりだったが、コーチが取材で明らかにし、世間の知るところとなった。
渡部暁斗の根性、潔さ、そして男気に、私は感極まった。
そして、渡部暁斗は「自分がレースに出たことにより、若い選手が無理して試合に出るのを懸念している。自分はオリンピックの特別な舞台だからやったことで、イレギュラーなケース。良い子には、まねして欲しくない」とも語っている。
未来ある子どもたちに対し、悪しき根性論を礼賛することなきよう、危惧するコメントを出す渡部暁斗の見識の高さ。
ただ、渡部自身はオリンピックだけでなく、ワールドカップでも怪我を押して出場している。
そこに、自分に厳しい彼のマインドが窺える。
日本が世界に誇る“キング・オブ・スキー” 渡部暁斗。
その強き心、そして人間力は金メダル以上の価値がある。