50歳の新人、先生になる 第17回「数学が苦手な子ども達」④ – 急がば回れ





これは50歳にして、これまで未経験の塾講師を志したアラフィフの体験談です。

講師として子ども達と関わる中で、気付いたことや所感を述べていこうと思います。

当記事が塾講師として奮闘している方や、学習塾に興味のある方の一助になれば幸いです。

基本に戻る

夏休みが終わり新学期を迎えた生徒達。
中でも、受験生にとっては本当の意味での勝負が始まります。

しかし、数学が苦手な子ども達は、ますます難しい単元に取り組まなければなりません。
ここは発想の転換で、思い切って分からないところに戻ってやり直しましょう。
というのも、中学1年の1学期に習う単元が理解できていない生徒も散見されるからです。

以前文字式について触れましたが、もちろん彼らにとって課題はそれだけではありません。
ひとりふたりのレベルではなく、受験生でも偶数・奇数、絶対値が分からない者がいるのです。
そして、マイナスを含む四則演算ができない、あるいは移項すると符号が変わることも知らないなどもしょっちゅうです。

これらが理解できず、どうして連立方程式や2次方程式が解けるというのでしょう。
高望みせず、最低限のことから始めるべきです。
学問の道に魔法の言葉などないのですから。

よく聴く

受験生にもなって、上記のことが分からないなど信じられない方も少なくないと思います。
ですが、定期テストで赤点未満、それも一桁得点の生徒のほとんどが該当するのが現実です。

我々塾講師に不可欠なのは、「当然これぐらいできるだろう」「これができないのは有り得ない」といった先入観を持たないことです。
塾講師になるような人は程度の差こそあれ、そこまでできなかった経験がありません。
なので、自らの経験から“このレベルはできて当たり前”というレッテルを貼りがちです。

しかし、現実は我々の想像の斜め上をいきます。
数学、いや勉強が苦手な子どもには己の常識を一端リセットして、よく現状を確認していくことです。
当たり前に思えるかもしれませんが、意外にこれができません。

私も最近ある生徒と接し、もしやと思い尋ねるうちに気付かされました。
幸運だったのが、彼の人間性が素晴らしかったこともあり普段から敬意を払うことができたため、信頼関係を築けたことです。
なので、彼の方も心を開き、自分の恥部をさらけ出してくれました。

小学校や中1で習った単元を正直に分からないと言うことは、プライドが高い子どもほど辛いのではないでしょうか。
プライドが高くなくても、屈辱に感じることでしょう。
ですから、生徒達の自尊心、そして尊厳を傷つけないように向き合わなければなりません。

ちなみに、塾講師にもかかわらず、私は勉強ができないことを悪いとは思いません。
人間誰しもが、不得意なことはあるはずです。
私も子ども時代、逆上がりや図工が苦手で苦労しました。
おそらく、どんなに努力しても克服することは難しかったでしょう。

ですが、逆上がりができなくても大人達からそれほど責められませんでした。
一方、勉強ができないと目の敵のように詰められます。
たまたま、勉強というフィールドが苦手だっただけなのに…。
とても理不尽に思えてなりません。

2次関数、相似の証明、因数分解etc.…。
イロハの“イ”もできないうちに、こんなものを無理強いしても埒があきません。
ここは「急がば回れ」で基本から、今できることから始めてみませんか。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする