50歳の新人、先生になる 第4回「要点はゆっくり話す」





これは50歳にして、これまで未経験の塾講師を志したアラフィフ男の体験談です。

講師として子ども達と関わる中で、気付いたことや所感を述べていこうと思います。

当ブログが塾講師を始めて間もない方や指導方法に悩んでいる方、あるいは塾に興味・関心のある方の一助になれば幸いです。

相手のペースでゆっくりと

私が勤める塾は、講師1人に対して生徒が数人の個別指導方式を取っています。
1人だけ見る場合はじっくりと向き合えますが、複数人を見るときは余裕がないときもあります。
限られた時間です。
そんなとき、ついつい早口になってしまう経験は誰にでもあるでしょう。

ですが、少し考えてみて欲しいのです。
塾は基本的に、学校の授業よりも先取りして単元を教えていきます。
つまり、生徒にとっては初めて見る内容がほとんどです。
そんな初出の公式や文法を早口で捲し立てられたら、生徒はついていくことができず混乱するでしょう。

人は新しい情報を大量に浴びると情報の洪水に溺れてしまいます。
さらに困ったことに、分からないことを抱えた状態では、次に来る情報をますますキャッチできない悪循環に陥ってしまうのです。

なので私は、単元で学ぶ要点は意識的にゆっくりと話すように心がけています。
意識しないと、知らぬ間に早口になっていることがあるので要注意です。
ゆっくりと話すことを心がけると、トーンも自然と柔らかくなります。
そして、一つひとつ丁寧に説明し、その都度理解したかどうか確認していきます。
優秀な生徒でも初見のものはすぐに理解するのが難しいことがあり、勉強が苦手な子なら言わずもがなでしょう。

数学で文章の横に図があるとき、生徒は両方を目で追わなければならなくなるため、普通のスピードではついていけないことがあります。
なので、そういう場合はことさら有効で、文章を読んだ後に図での解説も加えます。
たとえば、円の単元で孤や弦を学ぶとき、文章だけでなく図に書いてあるそれらをペンで指しながら説明します。
文字だけで説明するよりも、「ここの部分が孤で、これが弦」というように具体的に図で説明すると理解がスムーズに感じます。

単元によってはスピードアップのため要点の説明を省く講師もいますが、私は既出のもの以外、なるべく説明するようにしてます。
学習のポイントや目的を最初に理解した方が、生徒もイメージしやすいと思うのが理由です。
そして、問題演習に不安なく取り組めるため、解く時間も少なく済むのです。

余談ですが、テキストを声に出して説明することは、我々が思っている以上に効果的です。
あるとき、数学が得意な生徒を受け持ちました。
一緒に見ていた生徒の都合上、新しい単元をひとりで読んでおくよう指示を出します。
隣のこどもの説明を終えたので、数学が得意な生徒に内容が理解できたか確認しました。
優秀な彼のこと、てっきり分かったと思っていましたが、イマイチ呑み込めない様子です。
なので、例の調子でテキストを読んでいきます。
テキストに書かれていないことも少しだけ補足しましたが、基本的にはテキストに沿った説明だけで完全に分かったようでした。
一度前もって予習の形を取ったのが良かったのか、あるいは私のアドリブ的な補足説明のおかげなのか…。
それらも要因かもしれませんが、自分以外の人にテキストを声に出して読んでもらい、それを目で追いながら理解を試みると、頭に入りやすいのは間違いありません。
エビデンスについては分かりませんが、少なくとも私は実感しています。

伝え方

先で述べたことは、私のしがない経験則のひとつです。
最初は「なるべく早く授業を進めなければ…」と焦るあまり、早口になったり要点を簡略化したりすることもあったのですが、どうも生徒の表情が浮かないことに気づきます。
そこで、少々ペースは遅くなっても生徒の理解度を優先しようと開き直り、徐々に改良していきました。

私は以前、コミュニケーションを円滑にするためのワークショップに参加したことがあります。
そこで、人は心にモヤモヤを抱えたままでは、スムーズなコミュニケーションを図れないことを学びました。

これを今回のテーマに当てはめると、内容を消化できないうちに不安を抱えたまま、演習問題に取り組むことではないでしょうか。
不安や怖れという障害を少しでも取り払うのが、講師の役目のひとつだと思います。

まとめ

今回は、意識的にゆっくりと丁寧に説明することの大切さを述べてきました。
結局のところ、“何を言うかより、どのように伝えるか”が大切です。

人はどうしても、早口に、雄弁に、そしてテンポよく話す方が賢く見えます。
ですが、そのことと内容をしっかりと理解できることは別物です。
とりわけ授業においては、スピーディーなテンポで進められると咀嚼するための時間が間に合わず、しばしば消化不良を起こします。
魅力的に映るしゃべり方と理解しやすい話し方は、個別指導では必ずしもリンクしないというのが私の結論です。
人を惹きつけることが目的の話術は、CMやトークショーで披露すれば良いのです。

相手の精神状態や理解度に応じた話し方とテンポを心がけ、生徒がリラックスして授業に臨める雰囲気づくりの大切さ。
特に、私のような若さにも容姿にも恵まれぬ「50歳の新人」はなおのこと、悠揚迫らぬ物腰が必要だと思うのですが、如何でしょう。

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