ルパン三世の相棒・次元大介役でお馴染みの声優、小林清志が去る7月30日に亡くなった。
享年89だった。
アニメや映画の吹き替え、ナレーションなど、私が物心ついた時には既に八面六臂の大活躍をされていた。
その低音で渋い声は男のダンディズムを感じさせ、寡黙でクールな役柄がとてもよく似合う。
次元大介役の他には「荒野の七人」のジェームズ・コバーン演じるブリットの吹き替えも印象に残る。
ブリットも次元同様に銃の名手であり、孤高の雰囲気を漂わせる渋い大人の男だった。
こうしたことも手伝い、私の中では凄腕のガンマン=小林清志のイメージが強かった。
だが、やはり次元大介を抜きに小林清志は語れない。
まさに次元大介は、はまり役だった。
そして、小林清志が息吹を吹き込んだ次元大介は、ルパンの頼れる相棒として冒険活劇を繰り広げていく。
そんな次元大介の思い出を、未就学児の頃から見続ける「ルパン三世」とともに振り返る。
次元大介の思い出
「ルパン三世」の登場人物で、私が最も好きなのは銭形警部である。
元々、ユニークで味のある三枚目キャラが好きなこともあり、銭形のとっつぁんは不動のポールポジションの位置を占めている。
次点が次元大介である。
女好きでコミカルなルパンに対し、女嫌いで一本筋の通った次元。
だが、時折出てくる女性とのエピソードにロマンティストな一面を覗かせる。
そんなところも、次元の魅力のひとつだろう。
そして、次元大介といえば凄腕のガンマンだ。
その早撃ちは0.3秒を切ることもあるという。
長年愛用する「スミス&ウェッソン コンバット・マグナム」は、次元の代名詞ともいえる相棒だ。
また、次元大介という響きも良いではないか。
一説によると、作者モンキー・パンチが四次元などで使用する“次元”という言葉が好きなことから、名付けられたという。
スケールの大きい名前は“異次元のガンマン”次元大介によく似合う。
語り出すとキリがない次元だが、やはり男の美学、ダンディズムを感じさせるところが最大の魅力ではないか。
ソフト帽と黒系の渋いスーツに身を包み、あご髭を生やすハードボイルド風な出で立ち。
ジャズの流れるBarでタバコをくゆらせながら、独り寡黙にバーボンを嗜んでいる。
そして、ダンディズムに加え、義理堅さを己の基軸とするのも次元の特徴である。
こうした次元大介の世界観を確立させた立役者こそ、小林清志の低音ボイスに尽きるだろう。
幼き日、ルパン三世のテーマ曲を聞くたび、これは主人公のルパンではなく次元大介のテーマソングだと感じたものだった。
特に下記の一節は、次元大介のためのフレーズにしか思えない。
「男には 自分の世界がある たとえるなら 空をかける ひとすじの流れ星 孤独な笑みを 夕陽にさらして 背中で泣いている 男の美学」
まとめ
1990年代半ばルパン三世役の山田康雄が逝き、栗田貫一に代替わりした。
2011年、ルパンを除くメインキャストの声優陣が一斉に変更になる。
だが、次元大介だけは、代わることなく小林清志が続投する。
そんなところにも、「小林清志といえば次元大介」を感じさせ、唯一無二の代表的キャラクターを強く印象付けた。
そして、次元大介といえばジャズの雰囲気が似合う中にも、粋でいなせな部分を内包する。
最後に小林清志がファンへ贈った、これぞ次元という別れの台詞を紹介する。
「ルパン。俺はそろそろずらかるぜ。あばよ」