これは50歳にして、これまで未経験の塾講師を志したアラフィフ中年の体験談です。
講師として子ども達と関わる中で、気付いたことや所感を述べていこうと思います。
あくまでも、しがない素浪人が独断と偏見で書き連ねたものなので、気楽に読んでいただけたら幸いです。
格言キッドの疑問
ことわざや故事成語は、小学校中学年頃から国語の授業で習います。
私にも記憶がありますが、これらを学ぶと何だか頭が良くなった気がするから不思議です。
塾講師になる以前、ひょんなことから男子高校生に質問されたことがありました。
「ことわざや格言はためになると言うが、正反対のことを言っているものが幾つもある。どれが正しいか分からない。こんな矛盾だらけのものは、役に立たないのではないか」
う~ん。
なかなか鋭いことを宣いますね。
賢そうな相貌に違わぬ、良い質問です。
ですが、哲学の小径を歩む某には愚門というものです。
それはさておき、なぜ彼がこういう疑問を持ったかというと、元々国語が得意でことわざや故事成語の類が好きだったが、ふとした時に前述の矛盾に気付いたというのです。
例を挙げると、「石橋を叩いて渡る」は頑丈な石橋でも叩いて安全を確認する慎重さが大切という意味です。
片や、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」は虎の子を捕まえるためには虎の住んでいる穴に入らなければなりません。
つまり、危険を冒さなければ大きな成果は得られないということを指しています。
また、「善は急げ」は良いと思ったことはすぐに行うべきであり、「急いては事を仕損じる」は焦って慌ててやると何事も上手くいかないというように、対義語的な意味をなしています。
このように、ことわざや格言は正反対の意味のものが多数存在し、なるほど納得です。
見れば見るほど、彼の指摘が正しく思えてくるではありませんか。
ことわざ・格言は得難い教訓
さて、皆さんが子どもや生徒に前述の疑問を尋ねられたら、どう答えるでしょうか。
実は、私も高校生の彼と同じような疑問を持ったことがありました。
「いったい、どっちやねん!?」と。
しかし、様々な経験を経て、私は気が付いたのです。
やはり、ことわざや格言は決して間違いではないことを。
ことわざや格言は人々の日々の生活、営みから編み出されたものでしょう。
つまり、ある賢人が身近な人や我が身を振り返り、至らない点や改善すべきことを端的に表現した叡智の結晶なのです。
例えば、いつも思慮が足らず思い付きで行動し、失敗を重ねる人がいたとします。
この人物に送るべき言葉は「石橋を叩いて渡る」や「急いては事を仕損じる」が相応しいでしょう。
逆に、いつまでもウダウダと安全ばかりを考え、全く行動しない人がいます。
この人へのアドバイスは「善は急げ」または「虎穴に入らずんば虎児を得ず」が適切です。
人の性格は十人十色であり、それぞれが克服すべき課題は違うのです。
たまたま身近にいた人が無謀な性格だったとき、「石橋を叩いて渡る」という教訓を思い付いたのかもしれません。
あるいは、悩んでばかりで行動しない人を見て、具体的に行動する大切さを痛感し「善は急げ」という言葉が思わず口をついたのかもしれません。
いずれにせよ、性格や短所が真逆の人がいる以上、反対の意味のことわざがあるのは何の矛盾もありません。
要は、その人に相応しい教訓から学んでいけば良いのです。