今シーズンのフィギュアスケートは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの大会が中止に追い込まれた。
そんな中、シーズンを締めくくるべく、3月~4月にかけて世界選手権と国別対抗戦が開催される。
昨年12月に全日本選手権が開催されたものの、久しぶりに観戦する国際大会は、やはり感慨深いものがあった。
それは、私が最も応援するネイサン・チェンの滑りを堪能できるからに他ならない。
世界選手権
昨年は中止となった世界選手権だが、今年は3月にスウェーデンのストックホルムで無事開催に漕ぎ着けた。
男子シングルは、まず初めにショートプログラムが行われる。
ノーミスの演技で順調な滑り出しを見せた羽生に対し、ネイサン・チェンは冒頭の4回転ジャンプでいきなり転倒してしまう。
いくら現在跳ばれているジャンプの中で最も高難度の4回転ルッツとはいえ、チェンが尻もちをつく姿など、ここ数年とんと目にすることがなかった。
その後は無難にまとめたものの、98.85点で首位羽生結弦から8点以上も離された3位でのスタートとなる。
練習の時から普段より元気が無かったと報じられていたが、そのとおりの結果となってしまった。
だが、ネイサン・チェンの前向きなコメントに、逆にこちらが励まされる。
「コロナ禍に見舞われた、この1年は前例のないものです。その中で、このような機会を得られたことは本当に幸運です。演技自体は残念な結果でしたが、失敗は起こるものです。そこから学ぶことが大切であり、今回その機会を得ることができました」
ところが、中1日空けたフリースケーティングでは一転、自身が持つ世界最高得点に迫る222.03点を出したのだ。
それでも世界最高得点をマークした2019年12月のグランプリファイナルに比べると、ジャンプにキレというか躍動感が若干無かったのではないだろうか。
その証左として、今大会では演技構成点では僅かに上回る得点をマークしたが、技術点では3点以上下回った。
これはGEO(出来栄え点)の差がそのまま反映した結果である。
グランプリファイナルではほとんどのジャンプが+3~4前後、時には満点である+5に迫る加点があったが、世界選手権では+4を超えるGEOがなかった。
それでも、技術点だけで125点を超えるのだから驚異的といえるだろう。
結局、羽生結弦がフリースケーティングでは全くと言ってよいほど精彩を欠いてしまったこともあり、ネイサン・チェンの逆転優勝で幕を閉じた。
国別対抗戦
1 ショートプログラム
国別対抗戦は通常の試合とは異なり、ショートプログラムとフリースケーティングの合計で競うのではなく、それぞれの種目で順位を決め、その順位に応じて選手が所属する国にポイントが加算されていく。
そして、最もポイントを獲得した国が優勝するという、いわば国と国とが威信をかけて戦う団体戦である。
ショートプログラムでは、ネイサン・チェンがノーミスの演技で110点に迫る得点を叩き出し、今季自己ベストの羽生よりも2点以上もの差をつける滑りを見せる。
今シーズンはどの選手にもいえることだが、チェンも例外でなく練習環境を整えるのが難しかったことに加え、実戦不足も重なり本調子とはいえなかった。
しかし、大舞台でライバルと鎬を削っていくうちに、徐々に調子を上げてきたのであろう。
2 フリースケーティング
チェンは世界選手権から4回転ジャンプを1本減らして、構成を抑えたプログラムで挑む。
それでも、安定の演技で200点越えを果たし、羽生を10点近く上回り圧倒する。
今回は、世界選手権に比べ、羽生も調子を上げてきた中での1位であった。
ただ、惜しむらくは羽生の4回転サルコーが1回転ジャンプにすっぽ抜けてしまい、大きく点数を落としてしまったのだ。
結局、その差が響き、またもやチェンの後塵を拝す結果となった。